主の独り言

2020.03.06

彼女がその名を知らない鳥たち 白石和彌

率直に蒼井優の演技に魅入ってしまった。ホント素晴らしい女優だと思う。阿部サダヲもいい。竹内豊と松坂桃李のクズっぷりも素晴らしかった。
役者の演技が光る映画だった。

リア充のいい男である竹内豊と松坂桃李。しかし2人とも表面的で内面は退廃しており拝金的であり良心はない。女性に対して演じる自分を容易に変えられる点でサイコパスか演技性パーソナリティ障害の資質を持っていると思われる。

一方阿部サダヲは、外見は不潔で知的さのかけらもなく素養が無い。いい男2人の真逆であり、この対比が最後まで一貫して表現されている。

(登場人物達をダニエル・カーネマンの速い脳、遅い脳で分けても面白い。実は最もダメ人間に見える阿部サダヲが一番遅い脳を使っていて賢い)

主人公である蒼井優。彼女は明らかに境界性パーソナリティ障害であろう。さらにスキゾと思われる台詞が随所に散りばめられている。

さて、タイトルの鳥は何のメタファーであろうか・・

カラス、3匹の鳥、数多くの鳥。場面場面で象徴的に映し出されていく。
そして、本映画で象徴的なのは、鳥に餌を与えるかの様な仕草とグシャっと物が潰れる描写だ。ホテルの天井から砂が落ちてくるシーン。

さらに鳥というメタファーで想い出したものは、きみの鳥は歌える

これらを勘案すると本映画の鳥のメタファーの意味が立ち上がってくる。
そして最後、阿部サダヲのシーン。両手を横に伸ばし十字架となって・・

原罪(蒼井優の罪)を背負った阿部サダヲのお陰で、蒼井優は羽ばたいていくのだろう(いくことを願う)。

Category

Archive