主の独り言

2021.08.24

皆殺しの天使 ルイス・ブニュエル

あるブルジョアの豪邸で催されたパーティー。不思議な事に、客達が豪邸に入ると同時にサービススタッフやシェフたちが出て行ってしまう。本人たちも明確な理由はわからないが、なぜか外に出たがってしまう。
豪邸に残されたのは、約20名ほどの客とホスト夫婦と給仕長。

何故かリビングから全員外に出られなくなってしまう。出ようと思うと扉の手前になると急に出たくなくなってしまう。

物理的に閉じ込められているのではなく、各自精神的に閉じ込められているという感じ。さらに帰宅しない客の家族たちが豪邸の門まで来るが、中に入ることが何故かできない。

そしてここからカオス状態。空腹が襲い、精神的に追い詰められた客たちの関係性が悪化。他者への攻撃が激化する。理性が本能に駆逐される様子はこの映画の醍醐味の一つ。

普段紳士的な振る舞いをしているであろう富豪たちの、仮面が取れた人格があらわになっていく。

キーワードは、北欧神話に登場するワリュキューレ反復と羊。ワリュキューレとあだ名される彼女が、この精神的迷宮に皆を誘い、死と生を選別したとみると少し言わんとしている事がわかる。羊は迷える子羊(信者)、贖い、生贄を意味するのだろう。
反復し迷い込み、反復して脱出する。この反復の解釈がこの映画の最大のポイント。

超難解な映画で有名な本作だが、僕もまたこの魅力に取り憑かれてしまった。

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