主の独り言

2020.03.16

ブンミおじさんの森 アピチャッポン・ウィーラセタクン

ファーストシーンに牛が映し出される。木に紐で結ばれているのだが、牛が引っ張ると紐が切れ牛が森へ逃げていく。牛が引っ張ることで紐が伸びるシーンがアップされる事で紐に意味がある事を視聴者は受け取る。

仏教では牛は自我のメタファーとして使われる事がある。
そしてこの映画は仏教国タイの映画。そういうことなのだろう。

この映画では、我々の持っている時間の概念がない。現在、過去、未来が常に同軸にある。映画上、この構造を理解するのに少し時間を要したが、理解してしまえば、主人公の夢に出る前世が、牛だったことや、ナマズだったこと、未来に人間に捕まる事なども理解できる。

さらに、生物としての境界線もない。人間、精霊、幽霊などが登場するが、境界が明確に示されていないのだ。

これらの事を踏まえると、様々な想いが頭に浮かんでくる。仏教で言う輪廻の流れの中で、生きるとはどういうことなのか。人であるとはどういうことなのか。仏教の相即が表現されていると僕は感じた。

量子論的であり仏教的な興味深い映画だった。

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