主の独り言

2022.06.14

熊の場所 舞城王太郎

熊の場所・バット男・ピコーンの3作品収録。
熊の場所だけ読もうと思っていたが、予想以上に面白く3作品一気に読んでしまう。

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『恐怖を消し去るには、その源の場所に、すぐに戻らねばならない』
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熊の場所の台詞である。これには色々と思う所がありグッと気持ちを持っていかれた。

過去を思い返せば、僕はすぐに戻らない事で、解消に10年を費やした体験がある。先生を探しこの件に対峙した凄く苦労した10年。ポイントは“すぐに”。

登場人物のまぁ君はすぐに戻らなかった。だからあーなってしまった。

ニーチェの言葉が浮かぶ。
『怪物と戦う者は、その際自分が怪物にならぬように気をつけるがいい。 長い間、深淵をのぞきこんでいると、深淵もまた、君をのぞきこむ。』

2話目のバット男。
このメタファーの使い方も面白い。このバットは、順繰り順繰りと弱者を探し受け継がれていく。本作では乳児にまで受け継がれて行ってしまう。

そしてこの構造は変わらないのだろう。

3話目のピコーン。
本作を読んで、「誰もわたしからは逃れられない」。こんな想いが湧いてくる。
ダンサー・イン・ザ・ダークのビョーク演じる女性の様だし、バートン・フィンクの様でもある。


著者はテーマをシャドーとしているのではないか。
3作しか読んではいないが、僕はその様に感じる。

そして想うのが、
土居健郎の甘えの構造にある様に、
“甘え”
この重要さを感じぜずにいられない。

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