主の独り言

2022.05.26

白痴 手塚眞

原作坂口安吾の白痴を現代風にアレンジした映画。
空襲後の焼け野原に、着飾った女性モデルとカメラマンには驚かされたが、この映画の世界観がアレでわかる。プロパガンダ番組を垂れ流すあのテレビ局は、太平洋戦争時の参謀本部なのだろう。

虚飾とリアル。
この対立軸で登場人物を見ると面白い。

虚飾の人々は落ちない様(堕落)に、さらに虚飾を必死に重ね虚構の世界を作り上げていく。

一方、リアルな人々は、自然のままに堕落していき自分の虚飾の部分を削ぎ落とし、人間としての感情を剥き出しにしていく。その象徴が白痴の女性なのだろう。

テレビ局員や俳優、大家夫婦など虚構を生きている人々にとって戦争(空襲)は虚飾が剥がれる大惨事であるが、堕ちる人々にとっては、希望となる。戦争の前では皆同じだからだ。

堕ちきる事ができた人達のみ、明日への希望を持つ事ができる。
弥勒の救済のシーンはそういう事なのだろう。

堕落論を知らないと理解に苦しむ映画だと思う。

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