主の独り言

2021.05.20

百年の孤独 G•ガルシア・マルケス

20年以上ぶりに読む。読むと言っても当時の若かりし僕は、ガルシア・マルケスの世界を感じる程人生を経験しておらず、ちんぷんかんぷんのまま書棚に仕舞い込んだと記憶している。

今回、とある雑誌に、とある作家が百年の孤独に影響を受けた、との事が書かれており、今一度この難本に心機一転チャレンジしようと思った。

当時はちんぷんかんぷんだったと書いたが、何となくは物語や人物像は分かっていた。ちんぷんかんぷんだったのが、円環的な世界の解釈。今回は、この理解を目標に読書を始めた。

舞台はコロンビアの外界と遮断されたマコンドという村。マコンドは、百年の孤独の主たる一族の始祖が創った村である。封建的な村で、それぞれがそれなりに幸せに暮らし続けていた。しかし、外界との交流、国内の内戦の影響等が増加するにしたがって、徐々に村が変貌していってしまう。シャーマニックな世界観から近代に変わるのである。

凄まじい数のエピソードの数々。全て事象だけが書かれているだけであり、登場人物の心象は一切書かれていない。しかし、事象の数々が頭の中で繋ぎあって登場人物たちの心象が体感として伝わってくる。そして、登場人物は代々変わっていくが、伝わってくる心象は変わっていないと僕は思う。

皆それぞれに孤独を抱え、その孤独が第一世代から第四世代まで脈々と一族に受け継がれていく。

近代化の波が村を襲い、一族は滅び村も滅びる。

これは、マコンドという土地の記憶の物語なんだと僕は思う。著者の母国や生まれ育った郷愁も含め僕はそう感じる。

この何とも言えない読後感は、プルーストの失われた時を求めて、以来の読後感。宙を浮いているような、不思議な感覚にさえなってしまう。

一生共にしたい本との出逢いは、読書の最高の喜びの一つだ。

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