ディオニソスの陶酔

2023.01.06

口噛み酒

以前にもお話ししました通り、『日本酒』は『麹』の酵素の力でお米の澱粉を糖に変えてアルコール発酵をさせますが、この『麹』は奈良時代に大陸から製法が伝わってからになります。
では、それ以前はどうやってお酒を造っていたのでしょうか?

弥生時代には人口が増え、稲作が始まってきますが、『米』は大変貴重で神様へ農作物の恵みに感謝して捧げる『神饌』として日本酒が誕生します。
では『麹』の代わりにどうやって酒を造っていたかというと、人の唾液を使って発酵させており、神事に使われていたため、巫女さんの大事な役目となりました。長野県出身である新海誠監督の『君の名は。』という作品中でも登場していましたので、ご覧になられた方はおわかりかと思います。米を口に含み噛んでから器に移して発酵させます。これが『口噛み酒』という物で『醸造』の『醸』という字を『かもす』と読みますが、『噛む』が転じて読むようになったと言われています。

その後、『麹』を使って白濁した『どぶろく』が登場します。
余談ですが、当館より諏訪ICへ向かう途中に『御座石神社』という交差点を通られると思います。毎年4月に氏子の方々が造った『どぶろく』を振舞う『どぶろく祭り』という行事が神社で行われます。飲めるのは地元住人だけですが、覗いてみても面白そうですね。ただし、駐車場はございませんのでご注意ください。

日本では、すでに縄文時代に山ブドウなどの果実を使ってワインのような物を造っていたと言われており、実際に同じ諏訪圏の富士見町にある井戸尻遺跡からは果実の種が付いた土器が出土しています。
毎年7月中旬には大賀ハスという古代ハスが咲きますので、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

蓼科親湯温泉 ソムリエ 梅原 

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