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2024.02.26

〜蓼科 親湯温泉よりお届けする今月の1冊〜

『ニュースがまちがった日』/林直哉+松本美須々ヶ丘高校・放送部

平成6年(1994年)、松本市の閑静な住宅街で起こった松本サリン事件。神経ガスのサリンが散布され、8人もの死者を出した事件は当時テレビや雑誌でも大きく取り上げられました。また、松本サリン事件は第一通報者であった一般人がまるで犯人かのように扱われた冤罪報道事件でもあります。翌年に地下鉄サリン事件が起こったことから、オウム真理教による犯行だったことが分かり、各メディアが謝罪しました。

事件が起こったのは松本美須々ヶ丘高校から直線距離で1kmほどの場所でした。間違った犯人報道が過熱する間、放送部員たちは「この報道が間違っていたらどうするんだろう」などと話し、犯人逮捕の跡は「なぜこのような冤罪事件が起こってしまったのか」と疑問を抱いて当時の取材記者を取材。テレビメディアの脆弱性を浮き彫りにするラジオ版音声作品を、さらにその後輩たちがビデオ版を製作し、メディア・リテラシーの定義にまで結び付けていきます。

メディア・リテラシーとは、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・オンラインといったメディアに対して主体性を確立すること。さまざまなメディアが伝える価値観・イデオロギーなどをうのみにせず、主体的に解読する力をつけることをいいます。今ではリテラシーという言葉も一般的になっていますが、25年ほど前にすでにメディア・リテラシーについて考え追求していた林先生と高校生たちには驚かされます。現代の私たちにまさに必要なメディア・リテラシー。情報を見極める力、情報を受け取る側の責任を改めて考えさせられる一冊です。

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