主の独り言

2013.09.28

イキガミ


書店で、このマンガを手に取り、
自分のアンテナの低さにいつものごとく
ため息が出た。
2000年代前半に出版された、この全10巻のマンガ。
書店で見つけ、10冊大人買いを
その場でしてしまった。
先ず、私の琴線に触れたのは
主人公の藤本憲吾の人間性。
全10巻において、彼の人間性の描写が
事細かに表現される。
それを見て私は“中空構造”という言葉を思い出した。
中空構造とは、日本で初めてユング研究所に入った
京都大学の河合隼雄の言葉だ。
ユング心理学の勉強を終え、
日本に帰国した河合隼雄は、
日本人にユング心理学が当てはまる所もあれば
当てはまらないところがある事に
違和感を覚え、神話(昔話)の研究を始める。
そして、日本人の根底は“中空構造”であるという
大胆な仮説を立てた。
ここには、母性社会という父性不在の
国民性がもたらす日本人特有の
欧米的ではないオリジナルの構造があった。
さらに、
生物学者の福島伸一は
受精卵の初期の段階では、
球体の中心は空っぽで有り
輪郭の外側からの刺激によって
中心が規定されると言う。
そして、
哲学者西田幾太郎は
円相図で有名だが、
円の中心は空である。
さらに、
この手の話を続ければ
禅では我は空と喝破し
神話では我は傷であるという。
いずれも中身空っぽと言うことだ。
マンガイキガミでは
中身空っぽの主人公が
最後は、自己(セルフ)を発見し
舞台である“ある国”を出て“日本”に旅立つ。
日本語を話していたから
日本だと勝手に思っていたが
舞台は日本ではない。
そして、主人公は日本に旅立つ。
最後の10巻の肝の部分なので、
ネタバレになるので書くのを控えるが
ここに作者の日本人に対するメッセージがあると
私は感じた。
最後に
河合隼雄は中空構造の中心に
エネルギーが充満したときに
“有効である構造”であるとした。
中身空っぽの中心を満たすエネルギーとは
きっと○○なのだ!!!
このマンガは
小僧達が思春期になる頃に
読ませたいマンガになった。

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