主の独り言

2019.09.21

パターソン ジム・ジャームッシュ

繰り返す日常。
主人公と妻が一緒のベッドで寝ていて、
決まって午前6時15分ごろ起きる所から始まる。

フリーチャイルドの強い妻を
とにかく温かく見守る主人公。

仕事も市内を循環するバスドライバー。
毎日同じ経路。毎日同じ景色。毎日同じ時間。
違うのは上客達だけ。

そんな主人公が、趣味として詩を書く事を毎日続けている。
妻は、主人公の詩を気に入っており、
発表するようにけしかける。
しかし、主人公はのらない感じ。

そんな毎日が映像で映し出されていく。
何も変わらない主人公や妻の日常。
そこにはただ幸せだけが流れている。

周りは、関係性のもつれから
様々なトラブルを抱える人たちが出てくるが、
夫婦の生活は何も変わらない。

ジェットコースターのような展開は一切無い。
静かに日常が過ぎていく。

しかし、当初からポイントポイントで精神性への訴求が見られている。
映画の序盤、月曜日の妻が作った弁当には
ダンテのカードが入っていた。

ダンテと言えば、神曲

凄く簡単に言えば、愛する女性への愛の賛歌である。

そして、ダンテの神曲は、
33の詩の繰り返しで構成されている。

愛と繰り返し
この映画のテーマが冒頭から推測された。

映画が進むにつれ、
変わらぬ日常の中でも主人公の
詩への情熱が徐々に変化していく事が見えてくる。

同じ日常であっても、
心の中は全く同じでは無いのだ。

主人公の未来。
視聴者はその行く末を温かく安心して見守れる事だろう。
素晴らしい映画だった。

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