主の独り言

2015.02.27

夏の闇 開高健

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自我が融解し、闇に落ちていく様を描いたのが
輝ける闇”であった。
そして、開高健とおぼしき主人公の深淵な心を描いたのが夏の闇。
輝ける闇に続けて読み進めると、
ある言葉が私の頭に浮かんだ。
地火明夷(ちかめいい)。
これは、易経64卦(け)の中の
闇を描いた卦である。
夏の闇は地火明夷であると僕は感じた。
地火明夷の状態と言えば、
太宰治や、三島由紀夫など
時代を憂いて亡くなった文人は少なくない。
主人公も地火明夷の状態で死に近づく。
しかし、主人公は一筋の光明を見つける。
これは、正に地火明夷である。
僕は、開高健とおぼしき主人公の自我が融解し深淵の状態から
一筋の光明を見つけられたのは、
立川談志の言う“業の肯定”だったのだろうと思う。
文中では“ひりひりした”
そう形容されている。
この“ひりひり”を求め
彼は闇を抜けるのか・・・
こんな所で夏の闇は終わる。
易経では、地火明夷の次は
風火家人(ふうかかじん)
という卦になる。
風火家人は、家に帰る。
帰還を意味している。
帰還といえば、神話である。
この闇シリーズは3冊構成。
神話の三幕構成と見えるのは
僕だけではないだろう。
第三作は“花終わる闇”。
まだ読んではいないが、
開高健とおぼしき主人公は
どこに帰還するのか・・・
さらに、“花終わる闇”は未完とのこと。
残念な事に未完となったのか
あえて未完としたのか・・
開高健の略歴を追うと
あえて未完だったのかも知れない。
僕にはそう思えて仕方が無いのだった。

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