主の独り言
2015.02.26
輝ける闇 開高健
香川県に仕事で行く事になった。
どーせ行くなら、時間がかかった方が良い・・・
という事で、飛行機を辞め電車で行くことに。
旅の時は、僕は小説を読む。
普段は余り読まないが
旅の時はやっぱり小説である。
東京から岡山、そして高松まで。
電車という閉塞されたそして、ある意味拘束された
時間と空間の中、苦手意識を持っていた開高健を持ってきた。
当時大学生の僕には人生経験が乏しすぎて
挫折した巨匠の名作である。
東京から岡山に向けて窓から見える
光の数が少なくなっていく状況も
この本にぴったりだ。
過去挫折したとは言え、
一度読んだはずなのだが、一行目から新鮮さが湧き出てくる。
とにかく、開高健の文章からは
“匂い”が伝わってくる。
体験したことも無い時代、場所。
その匂いが伝わってくる。
実際、開高健はベトナム戦争に従軍記者として参加する。
この状況下で、
自己の自我が溶解する有様を
如実に、克明に描き続ける。
綺麗事は一切抜き。
人間の生き様。
いや、業を描き続ける。
物語も終わりに近づき、
開高健とおぼしき“主人公”が闇に落ちて行った。
そして、私も岡山から
終点高松へのマリンライナーに
乗車し、瀬戸内海の光の無い漆黒の闇に向かって行った。