お知らせ
〜蓼科 親湯温泉よりお届けする今月の1冊『岩波茂雄伝』〜

『岩波茂雄伝』/安倍能成 著
「しかし苟(いやし)くも生を否定せぬ限り、他人の厄介にならずして一日も暮らすことはできませ
んから、なるべく人の迷惑にならぬよう、身辺の小さな義務だけでも出来るだけ忠実に尽くすべきだと思い、小売の場合にも、出版の場合にも、私は此の事だけは、忘れぬように心がけて来たに過ぎないのであります。」
岩波茂雄は、日本を代表する出版社・岩波書店の創業者です。大正2年(1913年)に古書店・岩波書店を開業し、当時の商慣習に反して正札販売(正しい値段を書いて商品につけた正札を用いて商品を販売する方法)を断行。その後、夏目漱石『こころ』を出版して、出版業に乗り出します。さらに大正4年(1915年)に『哲学叢書(そうしょ)』、大正6年(1917年)に『漱石全集』を刊行。昭和初期には、東西の古典的価値のある書物を安く広く普及させることを目指し、岩波文庫を創刊しました。このほかにも多くの全集、講座、学術書を出版し、文学、社会科学、自然科学にわたる総合的出版社を築き上げました。
安倍能成は日本の哲学者、教育者です。法政大学教授、京城(けいじょう)帝国大学教授、第一高等学校校長、その後は文部大臣、学習院院長を歴任しました。岩波と安倍の出会いは、第一高等学校にさかのぼります。
岩波茂雄は諏訪で生まれ育ち、父の死をきっかけに上京して日本中学、第一高等学校へ進学します。この頃から人生問題に悩むようになり、二年生を落第して同級生になったのが安倍能成でした。岩波が中退してからも交流は続き、漱石没後にはともに『漱石全集』を刊行。後年には『哲学叢書』の編集者として関与しました。
「一番無遠慮な友人」が、近しい者ならではの率直かつ温かい眼差しで綴った岩波の公式伝記『岩波茂雄伝』。いくつもの困難や苦悩を、信念と情熱で乗り越え続けた岩波の生涯には、現代社会を生き抜くヒントが詰まっています。
