お知らせ

2023.11.16

〜蓼科 親湯温泉よりお届けする今月の1冊〜

『本屋さんのダイアナ』/柚木麻子

『本屋さんのダイアナ』に登場するのは、矢島大穴(ダイアナ)と神崎彩子という2人の少女です。出会ったのは小学3年生。ダイアナは母子家庭で、父親が競馬好きだったことから名付けられた名前と母親が染める金髪のせいで、なかなか周囲に馴染めず、友人をもつことができませんでした。そんなダイアナを周囲から守り、仲良くなったのが彩子でした。彩子は、編集者の父と料理講師の母に何不自由なく大切に育てられた裕福な家庭の娘です。二人は互いに憧れのような気持ちをもち、また本が好きという共通点によりさらに強い絆で結ばれていきました。けれども途中二人は行き違い、別れ、その間もどこか心の片隅で互いを思いながら成長していきます。ふたりをつなぐ絵本『秘密の森のダイアナ』はその成長に寄り添うかのように、いつも二人の傍らにありました。

『赤毛のアン』の「腹心の友」をベースに、女性の解放、父性原理からの解放などが緻密に織りなす物語は、読みやすく、ぐいぐいと読者を引き込む力があります。作品の中に登場するダイアナや彩子が好きな作品、幸田文や森茉莉、向田邦子の名前、そして名作『赤毛のアン』シリーズ、『若草物語』『風と共に去りぬ』なども興味深く、学生のころに読んだ心に残る本として、懐かしさを覚える人も多いのではないでしょうか。

主人公たちと学生時代に何かと葛藤していた自分を重ねあわせ、また、その頃に読み影響を受けた作家や作品をもう一度読みたくなる、そんな魅力に満ちた作品です。

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