お知らせ

2023.07.12

〜蓼科 親湯温泉よりお届けする今月の1冊〜

『ここ過ぎて 白秋と三人の妻』(小学館文庫)/瀬戸内寂聴

詩集『邪宗門』をはじめ、数多くの詩歌を残し、童謡や校歌などの作詞も手掛けた国民的詩人、北原白秋。その一方で、姦通罪による逮捕など様々なスキャンダルにまみれていました。そんな天才をめぐり、彼の生涯に関わった三人の妻たち。

「恋のない世になにがあるでせう」といった二番目の妻・章子は、白秋に会ったその日に身を投げ出し、清貧時代の彼を支えた情熱の詩人です。しかし、ようやく家を建てた祝宴の席で出入りの記者と駆け落ち…その後の章子は結婚と離婚を繰り返し、次第に狂気に呑まれていきました。本書には、蓼科へ逃れた章子が柳原白蓮の別荘で静養し、ひとり立ちしようとした姿が描かれています。気立てがよく恋に奔放な章子に対して、著者もことさらに共感を寄せ、当館2代目社長まで取材へ訪れるほどでした。

そんな瀬戸内寂聴氏の熱量ある取材力から書き綴られた『ここ過ぎて』
700ページにも及ぶ長編小説でありながらも、ページをめくるごとに伝わってくる著者の熱い想い。時が経つのを忘れ、つい読み耽ってしまう1冊です。

当館のお庭に建立する「薬師堂」では、心の迷いや煩悩を絶ち、全ての人を救いへと導く仏様、不動明王が祀られています。そういった由縁からも、恋多き女性たちはここ蓼科へ引き寄せられていたのではないでしょうか…

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