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〜蓼科 親湯温泉 バーとジャパニーズウイスキーのおはなし02〜

読書にはウイスキーが合う――。

そんな風に思うようになったのはいつからだろうか。ウイスキーのおいしさが分かるようになったのは、大人になってずいぶん経ってからだが、最近は本を読むときは、程よく心地よく酔えるウイスキーを選ぶようになった。

読書とウイスキーにはいずれもリラクゼーション効果があるのだという。本を読むほどに心を落ち着かせ、ウイスキーも味わうほどに心地よい寛ぎを与えてくれる。そして、ゆっくりと物語の世界へと導き、どっぷりとその世界に浸ることができるのは、本&ウイスキーの組み合わせならではだと思っている。

大正・昭和期に多くの文人や芸術家に愛され、文化の発信地として知られた宿だ。現在もその面影を残すように、館内にはゆかりのある絵画や書などを展示し、まるで博物館のような雰囲気がある。さらに3万冊の本が並び、宿泊客は好きな本を手に取って客室や「みすずLounge & Bar」で楽しめる、他にはない文学の宿である。

「みすずLounge & Bar」はジャズやシャンソンが流れ、上品で優雅、そしてどこか懐かしい空気が広がっている。ここで本を読むのならやはりウイスキーを味わいたい。メニューブックを開くとジャパニーズウイスキーのカテゴリには、長野県宮田村にあるマルスウイスキーの銘柄が並んでいた。また、バーに並んでいるウイスキーで飲みたいものがあれば、リクエストすれば作ってくれるという。その日は、マルスウイスキーのブレンデッドウイスキー「岩井トラディション」をオン・ザ・ロックで味わうことにした。

マルス信州蒸溜所

マルスウイスキーの歴史は古く昭和24年(1949年)に遡る。鹿児島で焼酎造りを行っている本坊酒造がウイスキーの蒸留を始めたが、ウイスキー造りに適した土地を求めて、昭和35年(1960年)からは山梨工場で、昭和60年(1985年)からは山梨の蒸溜施設を移設して長野県駒ヶ岳山麓のマルス信州蒸溜所でウイスキー造りを行っている。空気がきれいな寒冷地で、霧が多く、良質な水に恵まれたマルス信州蒸溜所で生まれたウイスキーは、高く評価され世界的なコンテストでも金賞を受賞するほどだという。

マルスウイスキーの生みの親と言われるのが岩井喜一郎氏だ。岩井氏は国産ウイスキーを生み出した竹鶴政孝氏を上司として英国に送り出し、竹鶴氏はその結果を「竹鶴レポート」にまとめ岩井氏に提出するなど、ジャパニーズウイスキー誕生に大きく貢献した人物だ。マルスウイスキーは、岩井氏が指導して設計されたポットスティルによって造られた原酒を元に誕生した。

「岩井トラディション」は、岩井喜一郎氏への尊敬と感謝を込めて造られたブレンデッドウイスキーだという。複雑で心地の良い香りと優しい口当たり、熟成感も感じられる上品かつ重厚感のあるしっかりとした味わいがすばらしく、なるほど、岩井氏の名前を冠するウイスキーだとうなずける。

ウイスキーを少しずつ口に含み、ゆっくりと味わいながら、本の文字を追っていく。物語の世界に入りこみ、時が経つのも忘れていると、グラスの中の氷がカランとなって、現実に引き戻された。

読書とウイスキーの心地よいひととき。何もかも忘れてリラックスする時間。秋の夜長はこんな風に過ごすのもいい。

※ジャパニーズウイスキーは入荷次第で、ご提供できない場合もございます。

→次回は、長野ワインについてご紹介します。

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