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〜蓼科 親湯温泉 文学のおはなし02〜

唐草模様のデザイン、印象的な壺のマーク……。やはり文庫は岩波書店の岩波文庫という人も多いのではないでしょうか。岩波書店は大正2年(1913年)に、岩波茂雄氏が開業した出版社です。当時、読書は一部の知識層だけのものでしたが、昭和2年(1927年)に日本初の文庫シリーズである岩波文庫を創刊。誰でも手軽に買える廉価の文庫の登場により、読者層が一気に増え、懐に岩波文庫を忍ばせて歩くのが当時の学生のスタイルになっていたといわれます。

蓼科 親湯温泉には、岩波文庫だけを集めたコーナー「岩波文庫の回廊」があります。長い年月の間に発刊された新旧さまざまな岩波の文庫本がずらりと並ぶ様子は圧巻。心地よい本の香を楽しみながら、昔読んだ懐かしい本を探したり、感動を求めて新たな一冊を見つけたり、豊かな時間を過ごすことができるでしょう。

文学をコンセプトにリニューアルを行った蓼科 親湯温泉に「岩波文庫の回廊」が誕生したのにはいくつもの理由があります。一つは、岩波書店の創業者である岩波茂雄氏は諏訪市の出身であり、その功績を称えるため。岩波茂雄氏が何度も蓼科 親湯温泉に宿泊していたこと。(「岩波文庫の回廊」には、その時の宿帳も展示しています。)そして3つめは読書家である現社長に最も影響を与えた一冊が岩波文庫の本だったこともあげられます。「岩波文庫の回廊」では、岩波茂雄氏の経歴や年表だけでなく、現社長の岩波文庫への思いや新設するまでの経緯について紹介しています。

諏訪にある「諏訪市立信州風樹文庫」は、岩波書店の本を集めた日本では唯一の専門図書館です。昭和22年(1947年)、地元中洲村の青年たちのために岩波書店が全出版物の寄贈を約束し、最初の201冊の本を寄贈したことに由来します。以来、岩波書店から出版されている全図書を所蔵しており、名前は岩波茂雄氏の座右の銘である「風樹の歎」により命名されました。現在は、昭和22年(1947年)以前の書籍の収集活動も実施。本の貸し出しのほか、定期的に講演会や読書会なども行われ、岩波茂雄氏の功績を今に伝えています。

日本一の本の町といわれる神保町のランドマークであった「岩波ブックセンター」は、その名の通り岩波書店発行の書籍を中心に扱う書店でしたが、平成28年(2016年)に惜しまれながら閉店しました。その跡地に平成30年(2018年)にオープンしたのが「神保町ブックセンター」です。店内に並んでいるのはすべてが岩波書店の本。辞典、文学作品、絵本まで約9000点の本に囲まれて、仕事をしたり、イベントに参加したり、本を読みながら料理やお酒を楽しんだり……。書店という枠を超えた、本と共に集い、寛ぎ、働ける場として、多くの人が訪れます。

読書の大衆化に大きな功績を遺した岩波茂雄氏。老舗書店である岩波書店の足跡は、岩波書店の本を愛する人たちによって各所に残され、またそこから新たな文化を育んでいるのです。

→次回は、バーで楽しむジャパニーズウイスキーについてご紹介します。

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