主の独り言

2021.04.26

オスマン帝国 小笠原弘

約600年以上も続いたオスマン帝国。兄弟殺しや第一次世界大戦時の大虐殺など汚名も多い。しかし、倫理的問題は括弧に括り、地政学視点から観ると強豪国に囲まれながらも600年以上も続いた事に対しては興味は尽きない。

一通りのオスマン帝国の概略は既に知ってはいるが、スルタン(皇帝の意)事に細かく記載されている本著は大変ありがたい。

オスマン帝国前半のスルタン達、特に二代目スルタンのオスマンや3代目スルタンのムラト、コンスタンティノーブルを陥落させたメフメト2世、数代先のスレイマン1世の優秀さには驚いてしまう。

同じ家系だけでこれだけ優秀な人物達が輩出され国を護り領土を拡大させた事には驚きしかない。

本著を読み進めると、日本の徳川家康が江戸を15代続けられた礎となる決まり事と同じような決まりをオスマン帝国前半に作り、代々守られていた事が読み取れる。

そして、イスラムの国ではあるが、キリスト教ユダヤ教なども受け入れ、宗教観の違いを乗り越え、調和が取れた(当然全てでは無いが)運営を行っていた事(オスマン帝国前期中期)には先進性を感じる。

また、奴隷の扱いも我々の思う奴隷のイメージと全然違う。相対したはハフスブルク家は、婚姻を武器と考えて領土を広げていった。しかし、オスマン帝国の殆どのスルタンは、奴隷と子を作る。これには驚いた。理由は、外戚が有力者であれば、自身の身が危うくなる可能性が高まるためだからである。これ一つとっても、オスマン帝国の戦略性の高さを感じずにはいられない。

長く続く事には理由があるのだ。

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