主の独り言
2020.11.03
息子の部屋 ナンニ・モレッティ
幸せな家族を襲う突然の長男の事故死。円満だった家族に軋轢が生じ、かろうじて家族の体裁を保っているだけだった。
精神分析医師だった父親も、長男の死の当日の急な往診を悔い続け、自責の念に耐えられず精神分析医師を辞めてしまう。
円満だった夫婦仲も険悪となり、会話も減っていく。
長男の死という突然の誤配。ピースはキチンとハマっていた家族は、長男というピースを失った途端に崩れてしまった。
息子の部屋というタイトルであるが、息子の部屋に息子がいる姿は映されない。
唯一息子の彼女(文通友達)から見せられた息子の部屋の中にいる息子の自撮り画像3枚だけだ。
そしてこの映画の核心はここにあると思う。
息子の本当の姿は親であっても知ることはできない。精神分析医師であってもという皮肉付きでだ。
映画のコピーでは、残された家族の再生の物語、のような事が書かれてあったが、僕はそう感じなかった。
ラストシーン、息子の命を奪った海を眺める家族3人。目線、距離感、各々の態度。
この家族の行く末を視聴者それぞれが自由に感じ取ればいいと思う。
BGMのブライアン・イーノが切ない。良い映画だ。