主の独り言

2015.12.27

夜の果ての旅 セリーヌ

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ルモンド世紀の100冊 6位の小説 夜の果ての旅 セリーヌ
小説という類いが苦手な僕だが、
興味深く最後まで読むことができた。
第一次世界大戦中、フランス軍兵士として
戦場に行った主人公。
戦争というリアルな生死をさまよう世界で
愛国心というものが崩れ、
生き延びたいという本能の前に
生きる意味を見失ってしまう。
“人はなぜ生きるのか”
この問いを常に発しながら
アフリカやアメリカへ流されるままおもむき、
様々な人と出会っていく。
人々の笑顔の奥の利己的な心に
猜疑心を募らせ、世界との距離は
ますます離れていく。
ざっとこんな話で物語は進んでいく。
主人公の
見える世界は自分の心の闇(投影)であり、
自分の闇を罵倒することで
主人公は“私”をかろうじて支えている。
20世紀の偉大な哲学者、ハイデガーは
人間は否応なしにこの世界に産み落とされ、
そして、生き続けなくてはならない。
このような状態を被投性と呼んだ。
そして、被投性は感情を通して自覚される。
・なんでこんなことを俺はやっているんだ
・この人生にどんな意味があるんだ
まさに、この小説は
ハイデガーのいう被投性の物語である。
さらに、主人公は
キルケゴールの死に至る病で示している
絶望という名の主体性のない人物。
そんな主人公の目から見える世界。
主体性がないからこそ見えるその世界が
僕にとっては新鮮で、読み応えのある
ポイントだった。
カミュの異邦人にしても
http://www.tateshina-shinyu.com/blog/?p=8468
今回読んだ、セリーヌの夜の果ての旅にしても
レベルの高い小説というのは、本当に面白い。
小説は苦手だが、月に1冊は
ルモンド世紀の100冊から選んで
読んでなれていこうと思う。

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