主の独り言

2013.01.05

暗黙知の次元

マイケルEポランニーの“暗黙知の次元”を読む。
これは私の特別棚に保管すべき一冊だ。
著者は
『結果を出すためには、発見されるべき何かが必ず存在するという信念に、心底打ち込む』。
このように結論づける。
思想的な思いつきで言っているわけでは無い。
膨大な研究によって導き出された科学的見解と受け取っても良いだろう。
さらに、巻末には
『私たち一人一人の“個人”には、たぶん宇宙的な原理として、より高次の階層に向かうベクトルが貫かれているのである』。
このような事も、日本語訳の本書には書かれている。
私たちの持っている“向上心”は凄く特殊なものでは無く
人間に備わっている普遍的な性質であると言うことなのだ。
さらに、この向上心とは、本書では“暗黙知”と表現されている。
暗黙知とは“上位の階層に精神的に向かおうとする働き”
と定義されている。
この暗黙知は、私たちに様々な気づきや大きな結果をもたらしてくれてきた。
この暗黙知の力を利用するためのヒントが
本書には書かれている。
これをテーゼとした場合に
私たちは大きな勇気をもらったことになる。
私たちの暗黙知は、未来を生き抜く大きな力なんだと。
ただ、逆説的な考えが同時に浮かんでくる。
鬱を代表とする現代の代表的な症状は
暗黙知の力を遮断したために起こるのでは無いかと言うことだ。
暗黙知からもたらされる気づきは、同時に苦痛を伴う。
そもそもの日常のリズムや、感覚を乱す恐れも大きいからだ。
そこに対して挑戦することで、生物は進化したと著者は言うが
その暗黙知からの気づきを遮断することが
本来の生物としての進化を阻害した結果が鬱を代表とした
症状なのでは無いかと私は思うのだ。
進化は苦痛が伴う。
だから、進化出来る生物は強いのだ。
こんな事を気づかされたおすすめの本だ。

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