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at Shinyu-onsen

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STORY 02勝手気ままな男の一人旅

  • 少し長めの有給休暇を使って、憧れていた男一人旅に出る。「六十の手習い」で始めた一眼レフを携えて。女房の写真は家族の成長と共に、あれこれアルバムに収まるものだが、男がこの年をして撮る写真は人生の年輪というフィルターを通した世界のありようがそのまま反映されるものなのだ(などと一人ごちてみる)

    どこか、里から離れた一軒宿に行きたかった。深い自然の懐に抱かれて、露天風呂でもあれば最高だ。そこで自然を撮ってみたい、と思った。

    昔、妻と一緒に訪れたホテルに行って見ようと思う。山あいの渓谷の果ての一軒宿。新宿から2時間もあずさに乗れば乗り換えなしで茅野駅に到着する。迎えのバスも来てくれるから手軽に行けるのに、宿に着いたら大自然の真っただ中で、人里も目にしないような所だったと記憶する。

    到着してまず驚いたのは、まるで図書館のようなロビー。聞けば蔵書は3万冊あまりだとか。それも昭和30年代、40年代のあたりの良書もたくさんある。あまりに変貌していたホテルの様子に驚いてキョロキョロしていると、レセプションの女性に「貸切露天風呂のご予約はなさいますか?」と聞かれ、若いカップルではあるまいし、そんなものは自分には必要なし、と思ったが、「今の季節はむせ返るような新緑を独り占めして入る露天も素晴らしいですよ」と言われ、それならはいるか~と予約を入れてしまった自分が少し恥ずかしい。

    新緑
  • 荷を預けたままカメラを携えて周りの散策を始めた。先ほどの女性に「渓流に沿って歩かれると圧倒的な自然が素晴らしいですよ」と教えてもらい、さっそく宿から7分ほど歩いた所の階段から渓流に降りてみる。

    暴れるままに張り巡らされている木々の根っこ、うっそうとした木立の中に自然のままに生している見事な苔、単純な緑という言葉では表現できない、吸い込まれそうな若い生命を感じさせる色、汚染された我が肺を根こそぎ洗い流してくれそうなマイナスイオン。思わず、ここは屋久島か?なんて思ってしまった。宿からこんな近い距離で、ちょっと木立の中に足を踏み入れただけでこの圧倒的な、手つかずの自然が私を待ち受けているなんて…。夢中でシャッターを切った。

    新緑と大滝
  • 下まで降りてゆくと「大滝」に出くわした。新緑の中ですがすがしい姿を見せてくれる。この時期はもちろんのこと、燃え盛る秋、雪を抱く冬も素晴らしいそうだ。

    滝のすそ野に小さなあずまやが建てられている。滝の雄姿を見ながらお弁当を食べるもよし、この大自然をスケッチするもよし。今日の宿がここを定期的に清掃しているとかで、だから朽ちることなく、旅人をしっかり見守ってくれているのだな、と合点がいく。

    どのくらい時間が経ったろうか?ずっと写真を撮りつづけていたが誰も来ない。この素晴らしい自然が守られているのは、ここがあまり知られていないからだろう。自分だけの大切な場所として誰にも知られたくない!と密かに思う。

    思いもよらぬ素晴らしい写真が撮れたことに大満足で、約束の時間になったので貸切露天風呂に行って見る。渓谷沿いのむせ返るような緑の深い中に身を置き、川のごうごうたる音に酔いしれてみる。レセプションの女性の言われたことは本当だった。男一人の、自然を独り占めの露天風呂はなんとも心洗われる素晴らしい体験だ。

    写真_レセプション
  • BARでビールを飲みながら、素晴らしい設えの本棚の中でふと目についた原田マハの「生きるぼくら」を手に取ってみた。そういえば、この作家も蓼科に住んでいる、という事を思い出す。読んでいると「御射鹿池」という所の描写に目が釘付けになった。スタッフさんに「ここは実在する場所なのか?」と思わず聞いてみたら、「人工池ですが鏡のように映る湖面の神秘な姿は本当に絵のように美しいです。シャープのAQUOSのCMでも使用された所ですよ」とのことだ。本当は有名な白樺湖の方に行って見ようかと思っていたのだが、手垢のついていないこちらの方が私の目的には合致していそうだ。明日は是非その神秘的な姿をこのカメラに収めてこようと思う。

    はやる気持ちが心地よい。たった一人で、気分の赴くままに、行きたい所へと自由気ままにあれこれ思いを巡らすのは、忙しい日々にもまれている自分への最高のご褒美だ。さあて、今度はウィスキーをちびちびやりながら今夜はこの本をじっくり読ませてもらおうか。

男一人で、自分だけの傑作を撮りに来るもよし。
作家を気取って万年筆を走らせるもよし。
雰囲気のあるBARで仕事を離れてゆったりと自分を顧みるもよし。

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