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2025.05.30

〜蓼科 親湯温泉よりお届けする今月の1冊〜

『国宝』

作者である吉田修一は、平成9年(1997年)に『最後の息子』で文學界新人賞を受賞しデビュー。平成14年(2002年)に『パレード』で山本周五郎賞、『パーク・ライフ』で芥川賞を受賞し、純文学と大衆小説の文学賞を受賞したことで話題になりました。

『国宝』は、溝口健二監督による映画『残菊物語』中で、主人公である歌舞伎役者・二代目尾上菊之助が演じる『積恋雪関扉』を見たのをきっかけに書かれたといわれています。その後、吉田修一自身が中村鴈治郎の下で3年間歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験を基に執筆。作品は『朝日新聞』に連載された後、加筆修正され平成30年(2018年)に『国宝 上 青春篇』『国宝 下 花道篇』の二部構成で朝日新聞出版から同日発売されました。

これは、任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げる主人公・喜久雄の物語です。歌舞伎界という閉ざされた世界の中で、ひたすら芸の道を究めようとする男たちをとりまく栄光と挫折、信頼と裏切り、歓喜と絶望・・・視覚的な歌舞伎の世界をみごとに小説に昇華させた吉田修一の最高傑作です。

吉田修一による作品の多くは映画化されています。『悪人』『怒り』などと同様に『国宝』も映画化され、今年5月には第78回カンヌ国際映画祭の「監督週間」部門で世界初上映され、大絶賛されました。公開は6月6日予定。ぜひ、小説とともに映画もお楽しみください。

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