お知らせ
〜映画祭・小津安二郎のおはなし02〜

映画界の巨匠、小津安二郎は蓼科を愛し、晩年には蓼科の地に山荘「無藝荘」を構えました。また、多くの映画人を蓼科に招いたときは、親湯(現在の蓼科 親湯温泉)に一緒に宿泊することもあったといいます。

『全日記 小津安二郎』にも親湯の記録があり、
昭和三十六年四月二十八日(金)
「雨上る 午後東宝藤本 金子くる 野田邸にて会食 のち親湯にいく」
また次の日にはMEMOとして
「親湯旅館<夕映の間> 風呂ありてよし <展望の間> 展望可(佳)なり」
と書いています。小津は「親湯」のなかでも眺めのよい二階の「夕映えの間」が特に気に入っていたことが分かります。

また、昭和の名優であり、⼩津映画によく出演していた佐⽥啓⼆(中井貴⼀・中井貴惠 ⽗)が蓼科に来た際も蓼科 親湯温泉を予約しました。スタッフは佐⽥夫婦に、⼩津が最も気に⼊っていた、眺めのいい2階の「⼣映えの間」を案内するつもりでしたが、小津は妊娠していた佐⽥啓⼆の奥様を気遣って、階段を上がる「⼣映えの間」ではないところを用意してほしいと、アドバイスしたといわれています。

小津にまつわるさまざまな逸話が残る蓼科 親湯温泉では、当時の様子を知るスタッフの証言を元に、小津が好んで利用した「夕映えの間」を再現しました。

これは、その名のとおり主室の大きな窓からは美しい夕映えが楽しめる絶景のお部屋です。また、家族を題材にした小津映画にちなんで、家族三世代が宿泊できるゆとりある造りで、主室に続き次の間、ベッドをしつらえた寝室が並びます。主室には掘り炬燵があり、のんびりと家族団らんの時を過ごせるのも魅力です。洗面には段差のある2つのボウル、主室にはソファを配置するなど、お子様からお年を召した方まで大人数で快適に過ごせるような心遣いもなされています。


さらに、お部屋の装飾は、小津の愛用品の数々が使用されています。これらの品々は、小津監督の親戚の方々から寄贈されたもの。かつて小津が使用していた薬箱は、派手な装飾はないものの、質の良さが光る逸品。御猪口や小皿一つとっても味わい深く、やわらかな温もりがあり、穏やかな小津の人柄を感じるものばかりです。

客室の前には、ギャラリーを設け、小津が蓼科で過ごした時の写真や小津作品のワンシーンを展示。蓼科でプライベートな時間を楽しむ小津の表情も見ることができます。「夕映の間」は、1日1組限定のプランです。小津ファンはもちろんのこと、家族が集まる大切な日に宿泊したい特別なお部屋です。
