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2024.07.30

〜蓼科 親湯温泉よりお届けする今月の1冊〜

『舞姫』

『舞姫』は、明治23年(1890年)に森鴎外が創作小説として『国民之友』に初めて発表した短編小説です。森鴎外が明治15年(1882年)から明治21年(1888年)に、ドイツに留学した経験をモデルに書かれたもので、留学当時の鷗外の様子がわかります。

タイトルになっている『舞姫』は、実際に鷗外がドイツで出会った踊り子のこと。二人は恋仲になり、その女性との恋愛経験を基に物語は綴られています。と同時に、ヨーロッパの自由な空気の中で、これまでの受動的で器械的であった自分の人生を見つめ直し、新しい世界へと飛び出していきたいと自由と自我に目覚めた鷗外。葛藤を繰り返しながら、迎えた結末は、皆さんもご存じの通りでしょう。

鷗外がドイツ留学から帰国して間もなく、ドイツからエリーゼという女性が来日しましたが、しばらく滞在して帰国(エリス来日事件)。その後も鴎外とエリーゼとは、密かに連絡を取り合っていたともいわれています。生涯にわたってエリーゼのことを忘れることがなかった鷗外。鷗外の作品に登場する美しい女性には、エリーゼの存在が感じることができます。また、明治43年(1910年)に発表された短編『普請中』は、エリス来日事件を題材にしていると考えられています。

蓼科 親湯温泉と深い縁のある娘の小堀杏奴の随筆の中では、穏やかで優しさが溢れる父親として登場する鷗外。20代の鷗外をモデルにした『舞姫』には、時代に翻弄される若者の苦悩と葛藤が描かれています。

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