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〜冬の蓼科のおはなし 01〜

車から降りると、頬に感じる冷たく清廉な空気。目の前に広がる雪景色。深く息を吸い込めば、心も体も清められ、非日常へとスイッチが切り替わるのを実感します。蓼科は季節ごとにさまざまな魅力がありますが、冬の蓼科が特に好きだという人も多いのではないでしょうか。実は私もその一人。確かに寒いけれど、美しく、静かな冬の蓼科は自分自身と向き合うのに絶好の場所です。

平均標高が1,000mを超える蓼科の冬は厳しく、最低気温は-20℃に達することもあります。エリアによっては11月後半ごろから初雪の知らせがちらほらと聞こえ始め、一度降った雪は溶けてなくなることはなく、青空とともに美しい銀世界が広がります。そして、1月~2月にかけては最も寒い時期を迎えます。

そのため私は、夏はアクティブに過ごすのに対して、冬の蓼科では宿で過ごすことにしています。蓼科高原の渓流沿いに立つ蓼科 親湯温泉は多くの文人・墨客に愛された老舗旅館です。武田信玄の隠し湯といわれる温泉、女性専用のプラネタリウム岩盤浴でリラックスし、そして3万冊の蔵書を誇るLibrary Loungeで本を読みふけり、美術館のように多くの文人や歌人、画家に寄贈された作品を鑑賞していたら、1泊2日では少し時間が足りません。今回の連載では、冬の蓼科 親湯温泉での2泊3日の過ごし方をご紹介します。

蓼科 親湯温泉は大正15年創業の歴史ある温泉旅館です。エントランスをくぐり中に入ると、想像していた伝統的な日本旅館ではなく、大正浪漫を感じさせるおしゃれな雰囲気に驚かされます。スタッフにLibrary Loungeに通され、ウェルカムドリンクをいただきながら、チェックイン。上海租界をイメージしたLibrary Loungeはまるで映画の中に入り込んだかのようで、3万冊もの本が並び、これから過ごす素敵な時間を予感させてくれます。

今回の滞在は自分へのご褒美なので、「蓼科倶楽部」を予約していました。案内されたお部屋は「柳原白蓮スイート」。宿にゆかりのある柳原白蓮をイメージしたお部屋は、シノワズリの壁紙、しつらえられた家具類、華やかなお花、何もかもが素晴らしく、お着き菓子「琥珀糖」を味わいながら、どんな風に過ごそうかと思いを巡らします。

一休みしたら、備え付けの作務衣に着替えて、お風呂へ。畳敷きのお風呂場は足に心地よく、安心して入れます。そういった細部への心遣いにほっこりと心まで温かくなりました。

露天風呂に足を入れると程よく温かく、空気が冷たいのでのぼせることもなくいくらでも入っていられます。渓流の流れに耳を傾け、豊かな自然を目の前にリラックスする時間。頭がからっぽになっていく至福のとき。湯けむりに包まれながら心がまあるくなっていく・・・。

極寒の中で楽しむ上質な温泉、これぞ冬の蓼科の醍醐味です。

→次号も引き続き冬の蓼科をご紹介します。

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