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〜蓼科 親湯温泉 温泉のおはなし04〜

耳に心地よい自家源泉掛け流しの音。懐かしさを感じる畳の香。扉を開けて、目に飛び込むのは、和と洋が絶妙に融合した大正浪漫の世界。モダンかつレトロシックな雰囲気に、一気に非日常へと引き込まれる。そして和室の向こう、坪庭の中央に見える露天風呂がここで過ごす休日への期待を膨らませてくれる。

蓼科を訪れるのは初めてだ。都会の喧騒と日常の慌ただしさを忘れるために訪れた一人旅。若いころは海外旅行によく出かけたが、40歳を過ぎたころから食事がおいしいところ、移動がきつくないところ、そして温泉に入れるところと条件を挙げていくうちに、自然と国内の温泉宿に滞在することが多くなっていった。中でも蓼科 親湯温泉は、自然の豊かな長野の地にあり、かつて名だたる文人が訪れた宿であったことから、一度訪れたいと思っていた。

一息ついたら、早速露天風呂に入る支度を始める。誰にも会うことなくそしてすぐに温泉が楽しめるのは、露天風呂付き客室ならではだ。一人旅の場合は、何をするにも自由なので、本を読んだり、ぼんやりと過ごしたりしているうちに、食事の前にお風呂に入りそびれることがあるのだが、目の前に露天風呂があればそんな心配もない。

坪庭は驚きの開放感だ。檜を使用した露天風呂を配し、客室の内装に合わせたインテリアで統一された空間はシンプルながらセンスのよさが光る。目隠しのために塀で囲われてはいるが、周囲の自然も十分に感じられ、坪庭の木々や草花も心を和ませてくれる。露天風呂に体を沈めて目を閉じれば、自家源泉掛流しの音、木々の揺れる音がとても心地よく、心がほどけていくようだ。「1/fゆらぎ」という周波数が含まれる自然界の音がα波を引き出し、心と身体をリラックスさせてくれるだけでなく、ストレスを沈め、免疫力を上げてくれるのだという。好きな音楽を聴きながら露天風呂を楽しもうと思っていたのだが、その必要はなかったことに気づかされる。

湯は熱すぎることがなく、かといってぬるすぎもせず、体を芯まで温めながらも、清廉な空気によってのぼせずに長く入っていることができる。武田信玄の隠し湯として知られる温泉は、無色透明。心と体を健康に導く効果があるといわれ、さらりとしていながらも美肌にも効果があるというのがうれしいところだ。

時折、バスローブを羽織って、坪庭に用意された椅子に座り、水分をとりながら庭を眺める。そしてまた露天風呂へ……。その繰り返しもうどれくらいこうしていたのだろうか。気が付けば日も暮れだして、予約していた食事の時間が近づいていた。

時間を忘れて温泉三昧を楽しむ贅沢。蓼科 親湯温泉の露天風呂付き客室で過ごす休日は、こんな風に過ぎていった。

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