お知らせ
2025.04.28
〜蓼科 親湯温泉よりお届けする今月の1冊〜
『風林火山』

「疾(はや)きこと風の如く、
徐(しず)かなること林の如く、
侵掠(しんりゃく)すること火の如く、
動かざること山の如し――。」
『風林火山』は、昭和28年(1953年)10月から12月にかけて『小説新潮』に連載された歴史小説です。当時は架空の人物であった山本勘助の人生を描いたもので、軍師として仕えた武田信玄や上杉謙信などが登場し、戦国時代の様子を鮮やかに伝えています。
物語の中心となるのは、武田信玄の下で軍師としての手腕を振るい、武田家を繁栄に導く勘助ですが、一方、由布姫(実際は諏訪御料人)への思慕も見逃すことはできません。由布姫は、諏訪領主であった諏訪頼重の娘で、とても美しい人だったといわれています。諏訪侵攻の際に、勘助は頼重を殺害。諏訪平定のために乗り込んだ高島城で由布姫と出会った勘助は、姫を助け、諏訪との宥和のために信玄の側室にしました。由布姫は若くして死んでしまいますが、由布姫が生んだ勝頼を当主になることを望みつつ、川中島の戦いへと向かいます。
タイトルは戦国大名である武田信玄の軍旗に記されていたとされる「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」の通称とされていますが、実際は井上靖が生み出した造語であったといわれています。それまで「風林火山」という四文字は知られていませんでしたが、「風林火山」の舞台にしたことにより、多くの人に知られるようになりました。
諏訪湖や高島城など、由布姫のゆかりの地がいくつも登場する「風林火山」。物語の舞台となった諏訪地方へと旅がしたくなる一冊です。
