お知らせ

〜映画祭・小津安二郎のおはなし 01〜

「水がうまい。酒がうまい。空気がうまい」

これは、昭和29年(1954年)8月18日、『晩春』以降の全作品を小津安二郎とともに脚本を書いた野田高梧の山荘「雲呼荘(うんこそう)」に滞在し、小津が語ったといわれる一言です。この滞在をきっかけに、小津はその後何度となく蓼科を訪れ、昭和31年(1956年)には、製糸業で日本の近代化を支えた片倉家の別荘だった「片倉山荘」を借りるほどでした。「無藝荘(むげいそう)」と命名されたこの別荘では6本の脚本を執筆。さらに、仕事場としてだけでなく、映画人たちのとの交流の場となり、俳優の佐田啓二や笠智衆、新藤兼人監督など、当時小津や野田を訪ねて蓼科を訪れた映画人たちは、自らも蓼科に別荘をもち、蓼科は文化の発信地として華やかに賑わいました。

これを記念して茅野市では、平成10年(1998年)から「小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」をスタートしました。これは、映画を観る・作るということを通して、文化的・人的な交流を図り、映画・映像文化の発展を目指した映画祭です。多くの人々が「小津映画・小津のこころ」に触れられるだけでなく、注目作品の上映、シンポジウムやシネマトークなどを開催。さらに平成14年(2002年)からは短編映画コンクールも行われ、若い才能の発掘にも力を注いでいます。今年は、名優 笠智衆の生誕120年を記念、小津監督作品の『父ありき』のほか、地元撮影作品や日本映画監督協会新人賞作品なども上映。俳優の役所広司さん、濱口竜介監督、成田洋一監督、山崎樹一郎監督が舞台トーク(予定)を行うなど、見どころも満載です。

企画室長である北原さんは、

「今年で27回目を迎える「小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」は、昨年には4200人の来場をいただき、今や市民イベントにまで成長することができました。私たちが映画祭をここまで続けられましたのは、小津家、松竹、監督協会のご支援、また地域の方々やスポンサーの皆さん、たくさんのボランティアスタッフのおかげです。

私個人の想いとしては、小津監督と蓼科との過去の歴史を忘れてしまってはもったいない、せっかく「小津」という冠をいただいているのに、やめてしまうのはもったいない、茅野市のブランド要素のひとつとして育てていきたいと思って頑張ってきました。また、毎年来ていただいている皆さんからの「ありがとう」という言葉や、「今年も元気で会えてよかったね」というお年寄りの言葉に励ましていただいています。

2時間で一つの人生や物語を表現していくという映像文化を楽しみながら「元気なまちの一助になるように、地域の皆さんの楽しみの場になりますように、頑張っていきたいと思います。」

と、映画祭への強い想いを語ってくれました。

27回目を迎える「小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」。今年は、9月23日から9月29日(※27日は会場準備のためお休みです)に開催されます。

映画祭をたっぷりと楽しむのなら、映画はもちろん、小津が愛した大自然やゆかりの地も訪れて、ゆっくり滞在したいものです。小津は蓼科に映画仲間を招くときには、当時は親湯とよばれる蓼科 親湯温泉に宿を取り、一緒に泊まることもあったといいます。蓼科 親湯温泉はこの度、小津が好んで宿泊していた客室「夕映の間」を再現しました。家族を題材にした作品にちなみ、和室とベッドルームを備え、どこか懐かしい雰囲気が漂うお部屋は、三世代をはじめとした家族での滞在がおすすめです。小津の愛用品やゆかりあるものも使用している「夕映の間」は小津ファンにはたまらないお部屋です。

映画祭に訪れる際には、ぜひ蓼科 親湯温泉へ。「夕映の間」で小津が過ごした豊かな時間をお楽しみください。

→次号も小津安二郎についてご紹介します。

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