お知らせ

2025.01.28

〜蓼科 親湯温泉よりお届けする今月の1冊〜

『日々是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―』

「世の中には、「すぐにわかるもの」とすぐにはわからないもの」の二種類がある。

―――「お茶」って、そういうものなのだ。」

このエッセイの著者、森下典子は『週刊朝日』の名物コラム「デキゴトロジー」の記事が好評で、平成元年(1987年)にその体験を描いた『典奴どすえ』(朝日新聞社)でデビュー。以後、雑誌などにエッセイを執筆しています。この自伝エッセイが飛鳥新社より刊行されたのは、平成14年(2002年)のこと。その6年後、新潮文庫より文庫化されました。

『典奴どすえ』の内容からすると、著者のイメージと茶道は程遠いかもしれません。けれども、母親の勧めで20歳のときから通い始めた茶道教室は以後25年間も続け、その後の著者の人生に大きな影響を与えていたことがこの作品から分かります。長い年月の間には、結婚の取り消し、父親との別れなどさまざまな出来事がありますが、それらを経て成長する過程が茶道の基本とともに綴られています。

エッセイは、まえがきでは先生「武田のおばさん」との出会いが描かれ、その後、序章の「茶人という生きもの」に続いて、15章、つまり「15のしあわせ」で構成されています。タイトルは、第一章の「「自分は何も知らない」ということを知る」から始まり、「頭で考えようとしないこと」「見て感じること」「季節を味わうこと」「成長を待つこと」など茶道の上達に通じることから、「今、ここにいること」「このままでよい、ということ」「別れは必ずやってくること」などのように、人生の教えにつながるようなものまでが並びます。時間の経過とともに、著者が年齢を重ねていく様子も清々しく、最後の章「長い目で今を生きること」では、新たな出発が描かれています。

人生において大切なことを茶道とともに教えてくれる一冊です。ぜひ映画も一緒にお楽しみください。 (映画では、「武田のおばさん」を名優、樹木希林さんが演じていました。)

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